永田哲也アンダーズ東京ホテルのエレベーター内アート作品
和菓紙三昧の作品は都内ですと東京の虎ノ門ヒルズにある、アンダーズ東京ホテルでご覧いただけます。
高速エレベーターが8基あり、そのうち5基の中に展示されています。
アンダーズホテルのアート作品のコンセプト
エレベーター5基の作品群には全体のタイトルが存在します。
「白の蒸留箱」というタイトルです。箱とはエレベーターのことです。
この箱にお客様が乗る、扉が閉まる。その瞬間エレベーターはギャラリーとなります。外界とホテルの間の小さな美術館。このお話を頂いた時、直ぐに快諾させていただきました。
美術とは個人的なしがらみから解放され普遍的で必然的、客観的で社会的なものだと思います。この場所以上に適した場所は無いと思いました。
以下は当時の作品のタイトルの説明文になります。
“エレベーターの暗がりの箱の中で、白い蒸気が湧き出ている。近づいて観てみると、鯛や鯉など魚の群れや四季折々の花々、鶴や亀に宝尽くしなど、今では懐かしさを覚える時代の申し子たちである。一歩下がって全体を眺めると、視野は水中、空中、水面へと変貌する。その中を彼らが右から左、左から右へと出現し、泳ぎ始めるのである。
その存在感はどこか軽快で透けるようでもあり、現実と非現実の狭間に位置し、もう一つの新しい様相を呈している。それは日本人の、あるいは東洋における歴史の記憶の断片を連続させ、連結させ、集積することにより得られる。
かすかな、わずかばかりではあるが記憶の奥底、心の深遠な部分でしっかりと共鳴し響き合う輝きである。人の心に新しい輝きを宿す水と大気の浄化作用にも似た再生の物語である。”
エレベーター内の5作品のうち、2点の作品についてご紹介します。
「蟷螂の棲むところ」
こちらの作品は生命の循環の営み、特に花々と動物、昆虫たちの物語。がテーマになっています。
中央に満開の四季の花々に包まれて昆虫たちが棲んで居る景色が一年という時とともに凝縮されて広がっています。
水平線を引いて上下で分けるとシンメトリーのような構図になっていて、中央には花王の牡丹を配置、上方に天に向かって開く花々と下方に水面に向かって枝垂れ咲く花々。その周囲には蝶が舞い、花々と憩いの時を過ごしています。
そしてその周囲には下方に泳ぐ鯉、上方には跳ねる鯉、ここでも水中と天空の極性が構図になります。泳ぐ鯉と跳ねる鯉の同じ型から取った鯉がいます。
しかし、配置の微妙な傾きなどの違いで一方は水中を泳ぎ、もう一方は天に舞うと云う違った表現になっています。
同じ型から取られているので兄弟とも言えますね。天に舞う鯉の方は滝を登り、登竜門に達しその後、全てを見通す玉を持つ竜に姿を変えます。
視点を近づけて見ると花々の中に虫達が姿を現します。遠くからでは視ることが困難です。この作品は近くと遠くの両方の視点で楽しんで頂く構成になっています。コオロギ、キリギリス、鈴虫、トンボにセミそしてカマキリ達が隠れています。虫は前にしか進まないことからポジティブな精神の象徴とされて来ました。また蟷螂は雄を食べつつ卵を産むと言われます。生命の循環が見える気がします。作品の視線のほぼ中央に配置されています。
「日の出に鯛の踊るところ」
勢いよく天に向かう宝尽くしと鯛の波。これが大きなテーマです。
できるかぎり様々な種類のお宝で構成してゆきます。
波の上に浮いているのか、それとも宝自体が波と化しているのか。
その為に制作にかなりのボリュームのピースが必要です。
画面の下方より中央、そして上方へと視点を移すとともに波の勢いの
スピード感も変化させます。同時に図と地の関係から水中、水面、空中へと画地は変化してゆきます。泳いでいた鯛も上方では勢いを増し飛び跳ねています。とても開放的です。
下方手前の大鯛が近景を、中央の日の出波が遠景を表しています。
この波の起点は手前の大鯛に乗った恵比寿様です。彼が波全体をコントロールしています。上方の解き放たれた鯛達は中央の日ノ出波を中心にその軌道は回転しています。北極星を中心に天体が回転するように。富士山に注目して下さい。富士山は波とともに傾斜をしています。これは見ている観者も波の中に居る。一緒に波に乗っていることを表しています。
最後に馬が隠れています、アンダーズホテルが開業したのが午年だったことを付け加えさせていただきました。